王国ファンタジア【流浪の民】
 ベリルをなだめようとするセシエル。

「なんだよおまえ」

 少年は低いくぐもった声で、舌打ち混じりに発した。

「飲み物だ。欲しかったのだろう?」

 ベリルは薄く笑い、目を据わらせる。

「弱っちい人間のくせに……」
「そう思うなら殺したらどうだ」
「ちょっ、相手は子どもだぞ」

「……」

 少年は包帯の巻かれた顔をベリルに向けた。

「!」

 驚きを見せる少年に、ベリルは口の端をつり上げる。

「なんでっ」

 力が使えない!? なんでだっ?

「精神的な力は物理的な力よりも防ぐのは簡単な場合もある。万能だと思うな」

 一瞬、そのエメラルドの瞳に動けなくなる。

「氷眼の民か」
「!」

 解った? どうしてだ……僕は氷眼の民が持つ透き通った氷蒼の瞳を包帯で隠しているというのに。
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