王国ファンタジア【流浪の民】
「さて」

 ベリルは改めて、初めに目に入っていた人物に近づく。

“カチャ……カチ……”

 青年は、慎重に手に持っている金属のかたまりをあつかっていた。

「中に入らないのかね?」
「!?」

 背後から声をかけられ一瞬、驚く。

「リエル様。お仲間の方ですよ」

 横にいた女性が青年におずおずと話しかけた。彼の召使いなのだろうか?

 灰色の髪の青年は、ベリルをチラリと見やると彼の腰にある剣に鼻を鳴らしてすぐに作業に戻った。

 それに、ベリルはクスッと笑う。

「……何がおかしい」
「さ、先に笑ったのはリエル様ですよ」

「だから、“様”付けはやめろって言ってるだろサラ」

 なるほど、彼らは複雑な関係のようだ。ベリルは2人の様子にまた小さく笑った。
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