王国ファンタジア【流浪の民】

街の風景2

“パシッ”

「! 待てよ」
「ん?」

 歩いていたベリルの手を、誰かが掴んだ。薄茶色の左目がベリルをギロリと睨み付ける。

「おまえ……核石を持ってるな」
「核石?」

 意味の解らないベリルはキョトンとした。それに、茶色の髪の青年はイラつく。

「しらばっくれるな。そこにある石だよ」
「! ああ……」

 青年が指さしたのは、ベリルの腰に下げられている革袋。マジックアイテムの入った袋だ。

 ベリルはそこに手を突っ込み、1つの宝石を取り出した。それは、美しい輝きを放つエメラルド。

「返せ!」

 バッと出した青年の手をすいとかわし、1歩後ずさる。

「返せと言われても。これは以前に報酬として受け取ったものだが」
< 87 / 246 >

この作品をシェア

pagetop