愛の楔
澪が俺に目を向ける。
俺は動けなかった。
いやに心臓の音が耳に響く。
「………知らない」
体が石のように重くなって筋一本動かせない。
「なに、それ………」
愕然としているとタイミング良く、病室のドアがノックされて開いた。
「どうじゃ、様子は―――目覚めたようじゃな」
人懐っこい笑みを浮かべながら看護師を一人引き連れて、山じぃが入ってきた。
「体はどうかの?」
「………」
笑みを浮かべる山じぃは既知の間柄のような雰囲気を出していた。
それに美空は不思議そうに見上げる。
「?」
山じぃもおかしいと思ったのか、首だけで振り返った。
「………どうした、」
「この子、若を知らないみたいなんだけど………」
言いにくそうに澪が口を開いた。