愛の楔
そんな俺がどの面下げて側に居れるというのだ。
「…………フッ」
「若?」
「…………」
俺は、己を嘲笑うと踵を返して何も言わないで病室から出た。
澪が呼び止める声を上げるが無視した。
自分に対する苛立ち、美空が自分を忘れてしまった哀しさが入り交じり、どうしようもない感情を持て余しながら病院の中を歩いた。
少し、外の空気を吸おう、と屋上に足を向ける。
行き際に山じぃと他の医者とすれ違った。山じぃは何か言いたそうだったが誰とも話したくなかったので言葉を交わすことはなかった。
――――何故、こんなことになってしまったのだろう。
革靴特有の音をさせながら階段を上っていくと、行き止まりに行き着く。
俺は、行き止まりのドアに手をかけて、一気に押し開いた。