愛の楔
沈黙に耐えきれなくなったのか美空がおずおずと口を開く。
それに応えたのは澪だった。
「なに?」
「なんで、あたしは病院に……?」
「あー……」
澪はガシガシと乱暴に頭を掻きながら何と説明しようか悩む。
「事件に巻き込まれた?んだよ」
「事件………」
「そう。それでここにいるんだ」
「貴方達は……?」
「俺達は………」
澪は言葉を濁す。
チラチラと俺を見ながら助けを求めてくる。
しかし、俺はそれどころではなかった。
もしかしなくても、美空のこの状況は一種の記憶喪失のようなもの。否、欠落かもしれない。
覚えていたくない、苦しみたくない、哀しみたくない、忘れたい。
死を覚悟した美空の、無意識の防衛反応。
こうなるまでに、美空は悩み、苦しんでいたんだ。―――それに俺は気づかなかった。
否、気づかない振りをしていた。