薔薇とアリスと2人の王子
 あなた王女なの、とアリスが関心を示していると、エルザは続けた。

「私みたいな口悪くて男みたいな性格の王女はいらないんだ。だからきっと人間にされたんだ」
「あら、人間も楽しいわよ」

 そう笑うアリスに向かってエルザが吐き出すように言う。

「多くの仲間たちは人間に憧れている。……でも私は人間が嫌いだ! 海をすぐに汚すし、自分勝手な奴らばかり。魔女狩りや幻獣狩りをすれば済むと思っている。邪魔なものをすぐに排除したがろうとする!」

 沈黙が訪れた。
 エルザは人間となった自分を認めていないようだ。エルザが“この国の者じゃない”と言った意味がアリス達にも分かったよ。
 それにしても可哀想だった。たった1人で地上に放り出されては、途方に暮れるだろうに。
 沈黙を破ったのはイヴァンだった。

「諦めて人間の生活に慣れることだな」

 相変わらず非情な言い方だよ。
 途端にエルザが立ち上がってイヴァンを見上げると、きつく言った。

「簡単に言うな! だから人間は嫌いなんだ」
「エルザ落ち着いて。一緒に海に戻る方法を考えましょうよ」

 そう言ったアリスの隣でカールがええ、と声を漏らした。

「僕らの魔女探しは?」
「薄弱な男はモテないわよ、カール」

 
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