薔薇とアリスと2人の王子
「……あれ?」

 岩影を覗くと同時にそう無意識に声を漏らすと、カールは固まったよ。

「何であなたがいるんですか?」

 岩影には確かにイヴァンがいたよ。波が打ちよせる岩に座ってさ。
 カールが驚いたのは、その目の前の海中にエルザの恋人であるルートヴィヒが浮いていたからなんだ!

「ああ、弟さん。たまたま会ったイヴァンさんとお話させてもらってたんです」

 ルートヴィヒがやや気弱めに言った。

「何の話をしていたんです? 兄さん」
「お前が加わると余計なことになる……」

 と、げんなりした様子のイヴァン。

「いいじゃないですか。僕がいないと大変なくせに~」

 カールも兄に倣って岩に腰を下ろすと、相変わらず髪をいじりながらルートヴィヒに聞いたんだ。

「……で? 兄さんとお話なんて何を話してたんです?」
「その、エルザの事なんです」

 うん、とカールが頷いて先を促す。

「恋人だというのになかなか素直になってくれなくて。あげく海に戻らないとまで言い出す始末ですし!」
「ツンデレだよ、それは」

 カールはエルザが海に戻るつもりなことを知っていたけど、黙っていた方が後々面白そうだったんで何も言わなかったよ。
 エルザ自身からもルートヴィヒには何も言うなときつく言いつけられていたしね。

< 118 / 239 >

この作品をシェア

pagetop