薔薇とアリスと2人の王子
静かなさざ波の音を聞きながらアリスが聞く。
「いつ死ぬつもりなの? あ、今の言い方は無いわね。ええと、いつ海に戻るの?」
「今夜にも海で溺れるつもりだ」
「元人魚がわざと海で溺れるっていうのも変な話ね……」
アリスがはっと辺りを見ると、間もなく夕方だった。
通りで身体が疲れているはずだよ。シャルロッテの小屋を出発して以来、全然休んでいないんだもの。
思いっきり屈伸をしながらエルザに笑いかける。
「でも良かったわね、人魚に戻れる方法があって」
「べっ、別に、ルートヴィヒの元に戻れるからって、よ、喜んでないからなっ!」
「…何も言ってないけどね」
墓穴を掘りながら慌てるエルザを可愛いと思うアリスだった。
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一方その頃。
「兄さーん、早く出てこーい」
カールはまだ兄のイヴァンを探していたよ。
夕方になると潮風も増してきて、少々ベタつく髪をいじりながらね。(どうやら彼は、自分の長い髪をいじるのが癖みたい)
「兄さーん。早くしないとアリス食っちゃいますよー」
そんな事を言っていると、岩影からボソボソと聞こえる声に気が付いたんだ。
これは兄だと確信して早足で岩影に近づく。
「兄さん! 全く、勝手に行動するなんてあんた何歳ですか!」
そう岩影を覗いたんだ。