薔薇とアリスと2人の王子

 野獣にとって悲しいことに、事態が進展することは無かった。
 解決策が見出されるわけでもなく時間だけが過ぎていき、やがてとっぷりと夜が更けた。今日が明日になるまでに数時間しかなかったんだ。

 アリス達といえば、てんでバラバラでさ。
 あと数時間で野獣が死んでしまうというのに!

「もう……私は死ぬのだ」

 アリスとイヴァンは2階にある野獣の自室にいた。
 野獣の自室は他の部屋よりは綺麗だったけど、照明が暗いことに変わりはなかった。

「諦めちゃだめよ」
「いや。もういいのだ。私は獣のまま一生を終える」

 助けようがないほど落ち込んでいる野獣に、アリスもイヴァンも困ってしまったんだ。
 ただ時間だけが過ぎてゆく。アリスがイヴァンの腕をつついた。

「あなたの弟はすっかり美女の味方だしね」
「あれは病気だ」

 それより、とイヴァンがベッドに腰掛けて項垂れる野獣に声をかける。

「あのクララとかいう女はお前が元は王子だった事を知らない。言ったほうがいいんじゃないか」

 イヴァンの珍しく的確な提案だ。

「そうね。私が言おうとしたらカールに止められちゃったし。人間だったと分かれば、心を開いてくれるかも」

 有言実行、さっそくアリスはクララの元に行くべく、野獣の自室を飛び出していったよ。

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