薔薇とアリスと2人の王子
「まだ分からないようだな」

 続いて兄のイヴァンだ。

「お前はラプンツェルを愛していると言っただろう。本当に愛しているなら、“どうせ根暗に戻る”などと言わないものだろう。お前は本当に――彼女を愛しているのか?」


 二度目の沈黙だ。しかしそれはすぐに破られたよ。クリストによってね。

「愛していたはずなんだけど……子どもがいるなんて聞かされると……。それにそんなに美しくなれるなら、僕なんかよりもっと別の男が――」

「なによ、それ!」

 ついにアリスが声をあげた。ずかずかと歩いてきて、クリストの真ん前に立つ。

「ラプンツェルが好きなのは貴方なのよ! そんな事まで疑うの!?」

 勢い余って手を出しそうなアリスを止めたのはラプンツェルだった。

「アリスさん、いいの……もう少しクリストと話をさせて」

 アリスは大人しくベッドに戻って、腰を下ろした。ラプンツェルはクリストの方を向いて続ける。

「もしクリストが父親になってくれないのなら、アンネお婆さんに頼んで堕ろしてもらうわ」

 絞るような声で告げたそれは、彼女の最後の懇願だった。
 これを言ってもダメなら諦めようと思っていた。
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