薔薇とアリスと2人の王子

 中庭に着いたとき、アリスは見たこともない庭園に目を奪われたよ!
 赤薔薇と白薔薇が咲き乱れる小道。それに繋がる池には鯉が泳いでいた。
 貴族の庭ってのは、アリスははじめてだからね。

「わあ、凄い庭!」
「ハシバミの木、あれです。実母が遺してくれた唯一のものだから……継母に頼み込んで切らないでもらったんです」

 ドリューが指差す先には、派手な庭園には些か不釣り合いな平凡な木。それがハシバミの木だっていう。近寄ってみるけど、なんの変哲もない細い木だ。

「この木にドレスが引っかかっていたの?」
「はい……」
「ふうん。魔法としか思えないわね」

 アリスは一応ドリューに“ローライド”っていう魔女のことを聞いたけど、答えはもちろん、ノーだった。

「なら、誰がドレスを引っかかけたのかしら」
「まさかお母様が!? だってハシバミの木だもの。死んだお母様が……!」
「死んだら何も出来ないわ。それは無いっ!」

 さあ困ったよ。
 アリスは自分たちの目的とは無関係だと思ったけど、ドリューを助けてやりたいしね。
それがアリスって子だ。
 もしかしたらアリス達の探す魔女との接点もあるかもしれない。

「それにどうにかしてアルフレート王子様と会わないといけないわね」

 そう言ったあと、アリスは眉をぴくりと動かして嫌な顔をした。
 なぜなら、イヴァンとカールの声がどこからか聞こえたんだ。

「あの馬鹿兄弟! ふらふら動いてるわね!」


< 35 / 239 >

この作品をシェア

pagetop