薔薇とアリスと2人の王子
イヴァンは整った眉毛を歪めた。
「それはどういう意味だ。お前はアリスが嫌なのか」
「違います。むしろ女の子は好きです。――ああ、そういう話じゃなくて! アリスが僕らを裏切らないか心配なんです」
それを聞くと、イヴァンはアリスの今までを回想した。13歳にして売春を経験していて、あの強気で、少々棘のある性格を。
そして笑みを溢す。
「確かに、あの娘ならありえるが……裏切るって何をだ」
そこまで言ったとき、外から何やら忙しい足音が2人の耳に届いた。
2人して顔を見合わせる。
「珍しく兄弟間で、まじめな議論がされていましたけど――中断ですね」
「どうせ継母にでも見つかったんだろうな」
そうして2人は様子を見に行くことにしたのさ。
ちょうど議論に飽きてきたところだったしね。
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その頃。
アリスとドリューは、中庭に繋がる渡り廊下のところで偶然見つかった2番目の姉さんから逃げ切ったところだった。
「はぁ、はぁ……やっと諦めたようね……!」
アリスは呼吸すら苦しそうに言った。
「今ごろ姉さんは悔しいでしょうね、いい気味だわ!」
「そうね! 正義は勝つのよ!」
いつの間にかアリスはドリューと気が合っていた。
意気投合した2人はそのまま中庭に向かう。