クロスロード

つ、冷たい。いつも以上……いやいつもこんな感じだけど。


私の対応が気に食わなかったのか微かに眉を寄せ表情を硬くした。

恥ずかしいんですお願いわかって、なんて願っても翠君には通じない。

結局の所自分の気持ちは、言葉にしないと伝わらないんだ。



「……はず、恥ずかしいから、」

「は?」



突発的に放った自分の気持ち。


が、彼は意味がわからないと言いたげな目で私を見てくる。

合わさっていた額はとっくに離れていて、さっき以上に翠君との距離を感じる。

つ……伝わらない。いや今のを理解してっていうのも無理な話だよね。



「前は……その、朝起きたら翠君いなかったし」



頭を過ぎるのは婚約前日の夜。そして当日の朝。

目が覚めた時、翠君はおろかベッドに人がいた形跡すらなかった。

昨夜の事は『幻』以外のなんでもないのだと、冷たいシーツが虚しく語っていた。




でも今は違う。

独自の痛みだけが残ったあの朝とは違う。


目が覚めても彼は隣にいてくれた。触れようと思えば触れられる。

今すぐにでも腕を伸ばせば、布越しではないリアルな温度が互いに伝わる距離にいるんだ。
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