アリスとウサギ

 端から見れば恋人に触れるようなウサギの行動。

 合コンの席なのに、なんて無粋な店員なんだろう。

 周りに誤解を招くようなことはやめてほしいのに、アリスは酔いのため拒否することもできなかった。

 耳に軽く吐息がかかり、ゾクッと体が震える。

 体の芯まで痺れさせてくれる声を心待ちにしてしまう……。

「直人はやめとけ」

 ハスキーな声はこのようなものだった。

 一言だけ告げて、ウサギはスッと離れた。

「オーナー」

 カウンターにいるアヤの呼び声に「はい」と応え、

「ごゆっくり」

 とテーブル席から離れていってしまった。

 やめておけとはどういう意味だろうか。

 いや、言葉自体の意味はわかる。

 問題は、ウサギがどういう意味を込めて言ったのかということだ。

 単なる忠告か。

 それとも……。

 そこまで考えて、アリスは再び自分の頭を小突いた。

 期待するな、と。


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