アリスとウサギ

 謎に包まれていたウサギのベールが少しだけ剥がれた。

 年が4つも離れていたなんて、想像したこともなかった。

 驚いて固まっているアリスを見て、ウサギは

「なんつー顔してんだよ」

 と笑う。

「だって、年上だなんて知らなかったし、お店経営してるなんてビックリしちゃって」

 酒で呂律が回らないが、何とか驚きを表現する。

 隣に座っている直人はウサギをからかうように言った。

「あ、バラしちゃマズかった?」

「別に隠してたわけじゃねーよ」

 自分は本当に彼のことを知らないのだと思い知らされ、アリスの気分はグラスの中の氷みたいに小さくなっていった。

「奈々子」

 ウサギはテーブルのみんなに聞こえるような声でアリスの名前を呼ぶ。

 更に彼女の左耳にかかる髪をそっとかき分け、そっと口を耳に近づけた。

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