アリスとウサギ

 拗ねて大人しくなったアリスの代わりに、早苗が話をふっていく。

「アヤさんってウサギ君とどういう関係なんですか?」

「経営者と従業員よ」

「それだけじゃないんでしょう?」

「今はそれだけ」

「昔はどういう関係だったんですか?」

 アヤは躊躇うようにグラスに口を付け、少しだけ薄茶色の液体を飲んだ。

 早苗の強い視線が惜しみなく注がれ、10秒ほどの沈黙の後、観念したように口を開いた。

「不倫相手だったの」

 アリスと早苗は声を揃えて「え?」と眉間にしわを寄せた。

 アヤは「言ってしまった」という顔をしている。

「秘密にしておいてね。隣の店の従業員にバレると面倒だから」

 不倫……。

 アヤには子供がいると言っていたし、浮気をしていたのは彼女の方だろう。

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