アリスとウサギ

 啓介という呼び方を聞いて、アリスはまた泣きそうになってしまった。

 仕事中はオーナーと呼ぶのに。

「プリン、奈々子ちゃんが置いていったんでしょう? 来てくれたなら、遠慮せずに入ってくれば良かったのに」

 プリンのことまでバレているとは……。

 ということは、きっとウサギも気付いているはず。

 アリスは何とも言えない恥ずかしさを覚え、俯いた。

「啓介、奈々子ちゃんを待ってたのよ」

「やめてください。そんなの、ありえないですから」

 拗ね気味に答えると、アヤはクスッと笑った。

「ホントに、二人ともよく似てるわね」

「似てる?」

 聞き返したのは早苗だ。

 アヤは大きく頷いて、

「二人ともあまのじゃくなのよ」

「ああ、確かに」

 二人で納得し合われても、アリスには解することができない。

 ウサギは常に自分の欲に正直で、その結果いろんな女と交わり合っているのだから。

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