アリスとウサギ

 体勢と言葉は裏腹だった。

 無精髭にかまわず頬をすり寄せるウサギ。

 強く抱き寄せられた体は、捩ることさえ許されない。

「何なんだよ、お前は」

「有栖川ですけど」

「んなことわかってんだよ。何でそんなザクザクザクザク俺を刺激してくるわけ?」

「ちょっと、やめてよこんなとこで……」

 アリスが情けない声を出すと、落ちた瓶の箱をそのままに、ウサギは手を引いて来た道を戻りだした。

 やや乱暴にドアを開け、中にアリスを押し込める。

 入ってすぐ左の壁に押しつけられると、ウサギはものすごく怒った顔をしていた。

「俺はな、派手で遊んでそうで、かつ後腐れない女が好きなんだよ」

 ズキッ……

 痛みに耐えるべく、歯を食いしばる。

「お前みたいなめんどくせー女、好きになるはずねーんだよ」

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