アリスとウサギ

 そして一歩、踏み出す。

 パタンとドアの閉まる音が聞こえると、また泣きそうになった。

 悔しくて、悲しくて。

 あんなやつ、どこが優しくてまじめなんだろう。

 何をもって「アリスのことが好き」だと判断したのだろう。

 みんな、とんだ勘違い。

 近寄るなとか現れんなって言われたんだから。

 次に早苗に会ったら、思いっきりクレームを付けてやる。

 アリスは唇を噛みながらまた一歩踏み出した。

 できるだけ速く歩みを進めると、階段にさしかかる前、グイッと腹から後ろに引っ張られた。

 空き瓶が一つ入った箱が手から滑り落ちる。

 背中に熱を感じる。

 頬がチクチクする。

 いつもの香りはしないが、自分を引き止めたのが何であるのか……怖いくらいすぐにわかった。

「お前、マジムカつく」

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