アリスとウサギ
「何やってんの? レポート?」
「うん。初ゼミのやつ。自分のパソコン壊れちゃって」
「ああ、そうなんだ」
興味がなさそうにジャケットを脱いだウサギは、それを椅子の背もたれにかける。
彼は服の趣味が大人だ。
大学生らしくないというか……渋いというか。
この日は淡い色のジーパンに、白いVネックのカットソー。
背もたれのジャケットは黒のレザー。
シルバーのネックレスとピアス、ゴツめのリング。
大学生なのに二十代後半くらいに見える。
確かに夜の街が似合うと思った。
おそらく付けたてのサムライの香りが鼻をくすぐり、アリスはまた彼にときめいてしまう。
それを隠そうと、彼と同じくらい興味のなさそうな顔で口を開いた。
「ウサギは? レポート?」
「いや、寝に来ただけ」