アリスとウサギ

 わけのわからない答えに、アリスは声を抑えるのも忘れて「はぁ?」と眉間にしわを寄せた。

 他の学生の視線が刺さり、慌てて身を縮める。

 寝るなら家で寝ていればいいのに、どうしてわざわざこんな場所に来たのだろう。

 ウサギはPCのキーボードを奥に寄せ、開けたデスクに頭を乗せた。

「女が帰らないとか言い出したから、講義があるっつって追い出しついでに逃げてきたんだよ」

 アリスは絶句した。

 彼の言葉を掘り下げると、

「連れ込んだ女とやるだけやったけど、別に自分は本気でも何でもないから講義にかこつけて相手から逃げた」

 というところか。

 アリスは思いっきりイヤな顔をしてやった。

「最低。連れ込んだらそれなりに責任取りなさいよ」

 腕を枕にしているウサギは、目だけを彼女に向ける。

「なんで? 別にそいつと付き合ってるわけじゃないけど」

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