アリスとウサギ

 みんなの癖のあるレポートの修正にも手間取り、時間はどんどん過ぎていった。

 たまに顔だけ寝返りをうち、ウサギがこちらを向く度に見られているのではないかという気になって姿勢を整えた。

 時間はあっと言う間に12時に。

 不本意だがウサギを起こさねばならない。

 あちらに顔を向けている彼に声をかけようとして、アリスははっとした。

 彼に触れようとしたことに、戸惑った。

 ウサギは白いカットソーに覆われた背中を呼吸に合わせて小さく揺らしている。

 その背中に触れたとき、手には何が伝わるだろうか……。

 PCの右下に表示された時計を見ると、12時3分。

 アリスはもう一度手を伸ばして、ウサギに触れた。

 背中をポンポンと。

「ウサギ、12時だよ」

 手に伝わってきたのは、カットソーのサラサラした感触だけだった。

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