アリスとウサギ

 深夜三時を過ぎた頃だろうか。

 この時間帯はほとんど客が来ないが、フロアを清掃していると入客のチャイムが流れた。

「いらっしゃいませ」

 接客のため走って入り口へ行くと、入ってきたのは派手な女の人とスーツ姿のウサギだった。

「お、アリスじゃん」

「ウサギ……」

 関わらないようにしようと決めたばかりだったのに。

 どうしてこんなところに……。

 アリスが驚いていると、ウサギと腕を組んでいる女が私の顔を覗いた。

 女はキャバ嬢風で、髪はゴージャスに巻かれており、ヴィトンのバッグを抱えている。

 目がパッチリと大きくて、美人。

「啓介、お店の子?」

 声は高くて可愛らしい。

 その鼻にかかる声で、彼を簡単に「啓介」と呼んだ。

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