アリスとウサギ
「いや、大学の子だよ」
「えっ、じゃあ本名でアリスなんだ?」
「苗字だけどな」
女の視線がアリスのネームプレートに移動する。
有栖川が読めないのか、首を傾げた。
「アリスガワ、です」
アリスは聞かれる前に自分から名乗る。
「ああ、なるほどね。すごい、珍しい」
女は酔っているのかやけにテンションが高い。
ウサギの腕をしっかり掴んでいるのを見て、胸がキュッと締め付けられた。
「二名様ですか?」
「はーい」
「おタバコ吸われますか?」
「吸いまーす」
「喫煙席はこちらですので、お好きなお席にお座り下さい」
「はーい」
アリスはウサギに言っているつもりだったが、返事は全て女から返ってくる。
ウサギは女に引かれるまま、ドリンクバー近くの席へと着席した。