アリスとウサギ

 アリスは二人に意識を集中した。

 仕事をしながら、会話に耳を傾ける。

「アリスっていうから、てっきり店の子だと思ったぁ」

「同じ授業を受けてるだけだよ」

「そっか。ま、あれじゃ啓介の店では働けないよね」

「うーん。そもそもあいつには向かない職種だと思う」

 啓介の、店?

 ウサギの店では女の子が働いているのだろうか。

 ということは、彼が言ったとおり、ホストではない。

 ていうか、話、本人である私に聞こえてますよ!

 そう思いながらフォークなどの準備を進めた。

「啓介、急にファミレス行きたいだなんて、どうしちゃったの?」

「たまにはこういうとこで食いたいんだよ」

 こういうとこで悪かったな!

 ウサギと女の出現に、アリスは何ともいえないイライラを抱えながら仕事をする。

 グラスを拭いていると、ピンポーンと呼び出しのチャイムが鳴った。

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