蒼月の燕
「…こんばんわー…」
診療室を後にし、イルミナ大魔本館に訪れた。
時間はすでに0時をまわっているが、この館を尋ねるのは夜の方が好ましい。
なぜなら…
「あのねぇ、いくらあたしが妖怪だからって、こんな時間に訪ねるのは非常識じゃない?」
館長を務める家主、エリナー・テオ・イルミナは妖怪だからである。
「…昼間に訪ねても同じこと言うじゃない」
「あたりまえよ。昼間は寝てるもの」
「…とりあえずお邪魔するわ」
勝手知ったる我が家とばかりに上がり込む。
「仕方ないわね…。リリー! ミリー! お茶の用意をして頂戴ー!」
エリナーが言うと同時に、二匹の妖精がポットとカップを抱えて飛んでくる。
「リアー! イラシャーイ!」
「イラシャイリアー!」
「…ふふ、可愛いわね、あなたたち」
人差し指で頭を撫でてやると、甘えるようにリアの顔に抱き着く。
「すっかりお気に入りね」
「…ええ、私もお付きの妖精がほしいわ」
「リア、ミリーホシイノー?」
「リリーホシイー?」
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