幸せのカケラ
“今まで頑張ってきた過程を見ずに、たった一度の失敗をいつまでも責め立てる会社なら、あなたから見切りつけてやればいいのよ”

そう言って、大丈夫と、君だけは笑って言ってくれたんだ。


そうしたら、本当にすぐに解決した。








「ねぇ、今日は何を食べようか」


僕の隣、肩を並べて歩きながら君が聞いてくる。


まるで“お出かけするよ”と声を掛けた時の娘の表情と同じ。

目がキラキラしてる。



思わず込み上げてきた笑いを、咳ばらいで濁す僕。




「君が決めていいよ」

「でも、あなたも食べるんだから、私だけの好みじゃ悪いもの」

「そんな事無いよ」




君へのご褒美なんだから、君が決めていいのに。


まぁ、毎度の事だけれど。



「リクエストある?」

「僕は何でもいいよ」




じゃあ…と君は、笑う。




「あそこはどう?」

「あそこってどこ?」

「昔、付き合っていた頃に行ったじゃない?少し路地裏に入った、小さいけれど美味しいフレンチの…」

「……ああ」



思い出した。


君が、デザートのケーキを三つ平らげたんだ。

別腹と言いながら。



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