窓に灯
亭主関白





 幼馴染で彼女の桐原恵里と同棲を始めて2ヶ月が過ぎた。

 大学一年の6月中旬。

「歩、起きる時間だよ!」

「ん……あと5分……」

 俺、西山歩の朝は、恵里の怒声で始まる。

「ダーメ! 今日は雨で、チャリ使えないんだからね」

「え? マジかよー」

 しぶしぶ体を起こせば、時刻は朝の8時前。

 講義は8時50分からだから、まだ時間に余裕がある。

 座ったまま再びまぶたが閉じようとしたとき、オーブンレンジの調理完了のメロディによって、それを妨げられた。

 気付けばトーストの香ばしい香りが鼻をくすぐっている。

 今日も、恵里が俺のために朝食を準備してくれていた。


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