窓に灯
翌日、恵里はいつものように早起きをして朝食を準備してくれていた。
昨夜の反省と不安で不機嫌な俺は、黙ってそれをいただく。
「あれ? 歩、なんか元気ないよ。具合悪い?」
そう言ってそっと額に触れてきた恵里。
「何でもねーよ……」
そう言って手を払うと、恵里は一瞬泣きそうな顔をしてキッチンへと行ってしまった。
なあ、恵里。
俺に話すことがあるだろう?
誰なんだよ、あの男。
「歩、今日バイトでしょ? あたし今日も遅くなりそうだから、ご飯は作って冷蔵庫に入れとくね」
「遅くなりそうって……何時になるの?」
「また午前様かも」
「そんな遅くまで何やるんだよ」
恵里が食器を洗う手を一瞬止めたのを見逃さない。
「打ち合わせとか、色々。夏のバーゲンが近いから、忙しいんだ」
色々、のところで声が震えたのはなぜだ?