窓に灯

「はあぁぁ~?」

 その時の原の顔は、デカい目を更にひんむき、鼻の穴まで開いて、俺は思わず吹き出してしまうほど。

「おい、そんなの聞いてねぇぞ」

「言ってなかったからな」

「何でだよ。友達だろーが!」

「あはは。なんか、恥ずかしくて。つーか驚きすぎ」

 原はそれから10分くらい喚き続けた。

 こいつが治まってから恵里に電話をしてみる。

 ……が、出ない。

 まだ仕事中らしい。

 俺は直接職場に鍵をもらいに行くことにした。

 俺が鍵を忘れた時はいつもそうしているし。

 チャリに跨り、駅前のMTビルへ。

 家とは違う方向だが大学からは割と近いし、鍵を忘れても大丈夫……という甘えがあって、今でもたまにこうして失敗をしているのだが。

 そのおかげで女だらけのこのビルを歩くのにも慣れた。

 3階上りエスカレーター横に位置している恵里の職場。

 慣れついでに、他の店員に顔まで覚えられてしまっていたりする。

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