窓に灯



 恵里は勉強が不得意だ。

 そのため、同い年ではあるが、俺が家庭教師に雇われたこともある。

 口癖は「意味わかんない」。

 はっきりいって教養はゼロに近い。

 俳句と川柳の違いもわからないし、四字熟語とことわざは同じだと思っている。



 だから、一緒に住むことが決まった当時は、亭主関白な暮らしになるだろうと予想していた。



 予想は大外れ。



 朝は恵里に起こしてもらい、準備してもらった朝飯を食う。

 夜は恵里の作った飯を食い、恵里の洗った風呂に入る。

 洗濯も恵里。

 掃除も恵里。

 高校時代まで母親にやってもらっていたことを、そっくりそのまま恵里がやってくれている。

 しかも、学生の俺より恵里の方が当然稼ぎが多い。

 俺はまるで頭が上がらない。


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