恋せよ乙女
「……人伝に聞いたんだけど、あそこのケーキが美味しいらしいんだ。行きたいかい?」
あたしを見下ろし、そう窺いながら発された問いに一瞬耳を疑った。でもそれは本当に一瞬だけで、次の瞬間にはもう、「行きたいですっ!」だなんて、声を大にして答えてしまって。
でも言った直後、不意に漠然と気になってきたことに、再び口を開く。
「……あ。けど、良いんですか?まだ買い物とか、それに……」
それに、氷室さんはあまり甘いものは食べないはず。それを知っていてもなお、クッキーを送り続けていた数週間前のあたしもどうかとは思うけれど。
「あぁ。もともと、今日の予定の買い出しはこれだけだし、気にしなくて良いよ。それに、今日これに付き合ってくれたお礼がしたいから、僕のことも気にしなくて良い。」
だけど氷室さんは、あたしの心を見透かしたようにそう答えた後、自ら先に店内へと足を向けた。