恋せよ乙女
「氷室さん……?」
「ほら、紫音。あそこ。」
「あそこ?」
その表情の訳を聞こうと思ったあたしの言葉は、氷室さんの言葉によって遮られて。
やっぱり訳がわかっていないあたしは、言い返すこともせず素直に示された方向へ視線を向ける。
すると目に映ったのは、所せましと並べられた店の間にある、お洒落な外装の小さな建物だった。
「“Cafe de Classic”…?」
今まで何度もこの道は通ったはずなのに、この店の存在に気づかなかったなんて。
重たそうな木製のドアの上、掲げられている看板にはそう示されている。
どうやら…否、間違いなくここは喫茶店だと気がつき、歩を休めることなく隣を歩く氷室さんへと視線を向けた。