恋せよ乙女

作業やら準備やらで賑わう廊下を通り、中央階段へと向かう。途中覗いた教室で偶然にも氷室さんの姿を見つけ、思わず頬が緩んだ。

……それにしても、重い。
しかも、箱のせいで階段を下りるときは足元が丸っきり見えないし、本当に最悪。

こんなのをあたしに頼むなよなーなんて、今さらながら心の中で悪態をつき、階段を下りきると同時に小さくため息を吐いた。

――刹那、


「……鈴木さん?」


玄関から入ってきた鈴木さんらしき人影を視認し、咄嗟に階段の影へと身を隠す。

どうしてあたしが隠れなきゃならないのか、なんて、そんなの今はどうでもよくて。

ただ、会いたくない。
顔を合わせたくない。

その一心での行動だった。
< 188 / 396 >

この作品をシェア

pagetop