恋する受験生
家の門に手をかけた時だった。
後ろから名前を呼ぶ声が聞こえた。
「紗江!!無事だったのか」
振り向くと、そこには血相を変えたお父さんがいた。
「ごめんなさい。家を出てしまってごめんなさい」
素直に謝ることができたのも俊のおかげだね。
私は冬なのに、おでこに汗をかいているお父さんをじっと見た。
愛されてるってことなのかな。
中学3年になってから、どんどんお父さんが嫌いになったけど、こんなかわいくない娘を心配してくれる。
「無事で良かった。お母さんが心配してるから、早く家に入ろう」
お父さんに肩を押され、玄関のドアを開けた。
玄関にしゃがみ込んだお母さんが、涙を流していた。
「紗江っ!!」
お母さんに抱きしめられるなんて、中学に入って初めてだった。
照れくさくて、お母さんにくっついたりしなくなったもんね、中学になってからは。
「お母さん。本当にごめんなさい。心配かけてごめん。もう勝手に出て行ったりしない」
「紗江…… どんなに心配したか……」