恋する受験生


冬休みが近付いていた。



学校ではうるさいくらいに、受験受験と言われる。


大きな紙に担任が書いた“みんなで合格”の文字がうざい。





俊を失っても、俊が私に残してくれたものは消えない。


家族仲良くやってるし、前よりも勉強は楽しい。



ただ、いつも考えてしまう。


もう言えないのに。



“これは、俊に言わなきゃ”って。





「おい! お前には冬休みはないんだからな」


帰り支度をしている私の前に担任が偉そうにやってきた。



「わかってるよ。てか、成績上がったじゃん」


生意気に返事をしたのが気に喰わないのか、担任は私の机を乱暴に叩いた。



「ちょっと成績が上がったからってそんな気持ちでどうするんだ。お前はクラスで1番危ないんだから。みんなの足引っ張るなよ」



イライライライラ

ムカムカ



うざい。





久しぶりだなぁ。

こんなにイライラするのは。




俊に初めて会ったあの夜以来だ。


俊に会ってからは、受験ストレスを感じていなかった。




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