レクイエム
「嬢ちゃん…いや、今やお頭だが、昔は泣き虫でなぁ…」


ナキの慌てっぷりが楽しいジレナフは、言葉を続けた。他の海賊達も興味津々に話を聞き入っては笑い声を上げる。


「シベリクスさんが今のお頭を見たら喜ぶだろうな…」


ジレナフの瞳にふと憂いの色が映る。
ナキも胸が疼いた。


「シベリクスさんって…?」


若い海賊が話について行けなかったらしい。重々しい空気の中おずおず疑問を口にした。


「あぁ、お前は最近入ったから知らないのか。シベリクスさんは嬢ちゃんの父親…前代のお頭だ」


ジレナフが新人に説明する。こんな若い女の子が跡を継いだ事、そしてジレナフやナキを始め、籍が長い仲間の思い詰めた表情を見れば、シベリクスがこの世には居ないことなど容易に想像できる。
新人はそれ以上首を突っ込まなかった。


「まぁまぁ今日は祝い事だぜ!シベリクスも辛気くせーのは嫌いだ、楽しく飲もうや!」


ジレナフがこの空気を払底するべく明るい声を掛けた。皆戸惑いながらもまた思い思いに酒を進め始めた。
ナキも始めは面食らったが、また皿に持った焼きそばを食べ始める。
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