レクイエム
何だかそれがおかしくて笑みを零すと、アレスに睨まれたので慌ててマントにくるまって眠る体勢に入った。
程なくして彼女の呼吸が穏やかな物へと変化した事が、眠りに落ちたと告げている。
マントから覗く顔は若干寒そうに表情を歪めるので焚き火をして暖を取ってやろうとも考えたが、魔族が寄ってきそうなのでしないことにした。

彼女が眠りに落ちている隙に魔族がやって来ないとも言い切れない。幹にもたれたまま、アレスは妖しい気が近くにないか探る。


──何だ?


何か、得体の知れない生物の接近を感じ、アレスは獲物の剣を具現化させた。
木に凭れていた体を起こし、柄に手を掛けて体勢を低く保つ。そして更に意識を研ぎ澄まし、殺気を振り撒いた。

瞬間、その気配は消え去ってしまった。

クーラを狙う魔族だったのだろうか。
臨戦態勢を解き、アレスはまたクーラの傍に腰掛けた。

またその気配が接近する様子もない。一旦は安全を確保出来たのだろうが、安心は出来ない。アレスは剣を地に突き立て、夜明けを待った。
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