レクイエム
まさか彼が魔族だと分かるのかと気が気でない。
実際には皆は彼の整った顔に心惹かれてるだけ。しかし恋愛感情等に関してどうも鈍いクーラに分からない。

早く人の目をかいくぐりたくて、早足で目的地に向かい始めた。


「先に行くと怒る割に自分も先に行くんだな」


彼女の背中を見て溜め息1つ。まぁいいか、と呟き彼女を追った。



:*:・:*:・:*:・:*:



首都リゼンレーナの貴族街。商業区や居住区と違い、人通りも少なく閑静だ。
この辺りは国の重鎮達の住まいが佇んでいる。歩けど歩けど目に付くのは延々と続く塀、塀、塀。
その豪邸は権力の強さに比例していると言ってもいい。
陸軍が巡回をし、治安維持に勤めている。


「着いたよ」


その貴族街の中でも非常に王城区に近くに位置した巨大な住居。
ここがクーラの知り合いの住まいらしい。

目の前にそびえる門はクーラの身長の軽く2倍はある。そして左右に1人ずつ警備隊が陣取っていた。歳はいずれも30頃だろうか。とても海賊が入れそうな場所ではない。

アレスはお構いなしに足を踏み出す彼女を不安気に見つめた。
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