かんけりっ!



そんな事を考えながら『彼女』はようやく『彼』のもとにたどり着いた。


が、自分の座る椅子がない。


『彼女』は腰に手を当て尊大な態度で『彼』に言い放った。


「まさかレディを立たせたままのつもり?」


暗闇に溶ける、黒絹とも称される艶やかな黒髪が不愉快を表現するように揺れた。


揺れたのは、黒髪。なはず。


けれど『彼』にはなぜか部屋の暗闇そのものが揺れている気がした。


車酔いに似た視界の歪みが『彼』を襲う。


だから嫌なんだ。この女は…。


『彼』は先ほどわざとらしく音を立てて置いた何かを掴み、口まで運びその中身を喉へと流しこむ。


「本当に好きなのね。それ」


『彼女』はそう呟いたが無視する。


今はこの飲み物の味を、香りを楽しみたいのだ。


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