ポケットの恋
25
幸日が帰って少して、集中治療室から看護師が飛び出してきた。
悪い方に予想した真実の体が、ぴしりと固まる。
しかし、真実とは裏腹に、看護師は嬉しそうに微笑んだ。
「大丈夫ですよ。山は越えたので安心してください。いちじはどうなるかと思いましたが…お母さんの気持ちの強さと、真実さんの思いの強さが届きましたね」
思わず呆気に取られてしまって、言葉が出なくなる。
察した古谷が会釈を返すと看護師は優しく微笑んだ。
「まだ麻酔で眠ってらっしゃいます。切れるのは…あと2時間位かな。面会時間過ぎちゃいますけど親族の方でお泊りになるなら…」
「っ…なります!泊まります!」
今度こそ真実が声を上げて、じゃあと看護師は歩き去って行く。
気が抜けたように、真実は溜め息をついた。
「よかったぁ…」
綻んだ笑顔と零れた言葉に、古谷は目を細める。
思わず伸びた手が、真実の頭を撫でた。
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