ポケットの恋
「とにかく!」
そう言いながらぐいっと古谷に顔を寄せる。
「金輪際この店来ないで!今度あたしがシフト入れてる日にあんたいたら、あたしバイトやめるから!」
その近さに、古谷は動揺した。
息を詰めるとふっと目を背け、ストローを口にくわえる。
「…秋田。近過ぎ。」
その言葉で気がついたのか、真実は飛ぶように後ずさった。
お互いの間に沈黙が流れる。
スピーカーから流れている明るい曲が、やたらと虚しく響く。
「そういや、さっきそこ戸田と南部歩いてた。」
古谷は不意に呟いた。
その言葉に真実は一瞬きょとんとし、その表情はすぐに呆れた顔に変わる。
「あんた…幸日のこと好きだからってね…ストーカー行為?」
溜め息と共に言葉を吐き出した。
「は?」
さらりと何か言い返して来るかと思っていたら、心底マヌケな反応が返ってきた。
「なによ」
「いや、なによじゃないから。なんのこと?俺が戸田のこと好き?やめてよ。南部に殴られるだろ」
「…違うの?」
古谷はふっと息を吐き出した。
「ちーがーうー」
「え…あ、そうなの。あんた昔からずっと幸日のこと好きだったのかと思ってた。」
古谷は返事をしない。
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