ポケットの恋
ふっと意識が戻ってきて目を開けると、幸日がすぐ側にいることに気付いて驚いた。
心配そうに見つめている。
「あー…ごめん、どんくらい寝てた?」
「全然。30分くらいです」
そう言って微笑む顔に申し訳無さが募る。
「お粥食べられますか?」
聞いてきた幸日に、そういえばそんなこと言ってくれていたっけ、と他事のように思い出す。
「もう冷めちゃったよね?ごめん…」
謝ると幸日は首を振った。
「大丈夫ですよ。」
そう笑って台所に消える。
しばらくして戻ってきた幸日は、湯気の立つ小さな土鍋を持っていた。
ベッド脇に座ると鍋掴みを嵌めて土鍋の蓋を開ける。
中には予想通り温かそうな、卵粥が入っていた。
「作ってくれたの?」
聞くと幸日は決まり悪そうに笑う。
「お粥はよし君が買ってきてくれたインスタントなんです…あたしは卵混ぜて煮ただけです」
「それだけでもすごいと思う…」思わず出た言葉に幸日ははにかんだ。
「でも、南部さんも結構料理するでしょ?いっぱい調理道具ありましたもん」
幸日の語調が緩やかになっている。
距離が縮まったような気がして嬉しい。
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