ポケットの恋
そんなことを考えて、相当に熱が回ってるなとおかしくなった。
それとも熱のせいにするのは意気地がなさすぎか。
「そうでもないよ」
一人で作って一人で食べるのもなんか侘しいし、弁当ばっか。
続けようとした言葉は音にならなかった。全て咳に飲み込まれてしまう。
「大丈夫ですか?!」
幸日が焦ったように言って背中をさすってくれる。
その手が心地よかったからかもしれない。
気が付けば口走ってしまっていた。
「幸日ちゃんが恋人だったらいいのに」
幸日は驚いたような顔になってそれからすぐに可笑しそうに笑った。
「南部さん、熱回りすぎ」
さらりと流されたと気づくのに、数秒かかった。
「え…」
流した、と言うよりは、冗談で言われたと幸日は解釈したらしい。
相変わらずにこやかに笑いかけてきた。
「お粥食べるのに、金属のスプーンじゃ熱いと思うんですけど…木のスプーンありますか?」
一番したの引き出し、と言う言葉は、無意識に出た。
ただ、一番言いたかった言葉は、突っ掛かって出てこない。
じゃあ持ってきますね、と幸日は立ち上がろうとした。
言葉は出てこない。
出てこない代わりに、手が伸びた。
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