夜  話  
エンは、この小国の王の妾腹に生まれた姫君だった。


王はエンの母を一目見て恋に落ち、夫と子供の前から引き離し、連れ去り、城の中に閉じ込め溺愛した。


失意のなか、はかなくなった母が残した女児を、父王は身代わりのように愛した。


まず、あてがった城の部屋から1歩でも外へ出ることをかたく禁じた。


そして自分が選んだ一握りの者以外が、彼女と接触できないように心を砕いた。


彼女の部屋を訪れる者は、身の回りの世話をする乳母やと、父王。


そして、俺だけだった。
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