夜  話  
語り終えて目を伏せた皎は、その時の想いを噛み締めているようでした。


「コ……ウ?」


そっと呼び掛けながら、彼を見上げたわたしを、皎は優しく抱き締めてくれました。


「彼女を……エンを、愛していたのね。」


抱き締められながら、そう尋ねると皎の身体がびくりと震えました。


「………あぁ。気付いたのは、目の前で見送った時だったけどな。
その時まで、自分の胸の奥でずっと低く響き続けている遠雷のようなこの感情が何なのか、俺は自分でわかっちゃいなかったんだ。」


そう言うと、皎は自分の上着を撫でました。


「彼女はこんなに深く俺の事を愛してくれていたのに。」
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