夜  話  
彼がいつも身につけているその上着は、美しい銀糸でこまやかな刺繍が丹念になされているもので、わたしはいつもその見事さに目を奪われるのでした。


そしてそれが彼女からの。


エンからの贈り物であったと知って、すとんと納得できたのです。


「エンは、長い時間をかけてこれを作ってくれていた。そして遺言に残していたんだ。遺体をあの国では前例のなかった火葬にする事と、その棺の中にこの上着を入れて欲しいという希望を。」


エンは知っていたからな、と皎は言いました。


「想いを込めたものを燃やせば、その煙は天に昇り俺達のもとへ届けられるという事を。」
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