夜  話  
「お前なら、そう言ってくれると思った。」


皎はそう言ってわたしを一度強くぎゅっと抱くと、身を離しました。


「エンの事を、お前に話せて良かったよ。」


深く感情を籠めて、皎はわたしにそう囁き、視線を絡ませると紅椿の色に染められている唇を、わたしに近付けました。


思わず瞳を閉じてしまったわたしの瞼の上に。


そして額に皎は、そ、と口付けを落としました。


またな、という声が聞こえたのと、風が外へ向かって動いたのは同時でした。
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