夜  話  
それはまるで、以前に読んだことのある何処かの国の神話に出てくる月のように。


月の光がこごって出来た太陽に焦がれられてしまった為に、太陽がその務めを果たさなければならない昼の間は、仕方なく海の中に美しいその姿を隠さなければならなくなったという、優しく美しい月のイメージそのままの姿のようでした。


蒼く。


蒼く澄んだ海底で。


静かに夜の訪れを待ちながら、地上に在るもの達の事を想って胸を痛める神話の月は、優しく。


あくまでも、ただ優しく。


わたしの中に記憶されていました。
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